MIAUとダビング10

忘れてたー。MIAUが「ダウンロード違法化」の次の軸として反対表明してるのに、全く話してないわ。
そろそろ、来週半ばが締め切りのパブリックコメントに、何書いて出すか、という話をまとめていきたいので。
 
今のうちに話題にしておきましょう、ダビング10について。
これは、地デジで放送した番組を、どう保護しましょうか、という話。
 
地デジ録画の新ルール名を「ダビング10」に統一(AV Wacth)
にあるように、

地上デジタル放送録画番組の現在の運用方法である「コピーワンス」については使い勝手の悪さなどを理由に見直し作業が進められ、8月の総務省情報通信審議会にて、録画した1番組について9回までのコピー、10回目でムーブという新方式への移行が提案された。
(中略)

  • ダビング10はデジタルチューナ搭載HDD録画機(PC含む)が対象。HDD非搭載の録画機では従来通りの動作となる
  • 現在発売されている録画機はダビング10に対応していない
  • ダビング10用メディアは、ARIB技術資料で定められるコンテンツ保護方式(AACSCPRM)に対応している必要がある
  • HDD以外のメディア(DVDなど)に直接録画した場合は、ダビング10にはならず従来通りの動作となる
  • ダビング10で録画したものから孫コピーすることはできない
  • 地デジ放送はダビング10になるが、(BSなど)すべてのデジタル放送がダビング10になるわけではない

というものです。
 
ダビング10の前に、まず、現状のコピーワンスから話しよう。
コピーワンスとか言ってるけど、要するに、「いきなりムーブ」な訳。
「メディア継承のため追加対策を」コピーワンス見直しを斬る(IT-PLUS)
上の記事をまとめると、コピーワンスの問題点は大きく3つ。
 

  1. ムーブ時の事故。ムーブを失敗すると、HDD内のコンテンツも消え、メディアにも記録されないという事故がある
  2. ハイビジョンコンテンツを圧縮してムーブした場合、二度と高解像度に戻せない
  3. メディアにムーブすると編集できない。メディアから更にコピーできない。VHSからDVDにコンテンツをコピーする、という次世代メディアへの継承が出来ない。

 
そこで、ダビング10。「9回まではコピーOK、10回目はムーブ。孫コピーは禁止」という仕組みが出てきました。
「お、9回もコピーできるんなら、何の問題もないね」「コピー9回で足りないってのは、人に言えないこと、やろうとしてるんだろ?w」と思うには、早すぎる。
回数の問題じゃなくて、孫コピー禁止、ってのがマズい。コピーワンスの問題点のうち、1と2は対応したが、3は出来ない。エアチェック(リンク先はWikipedia)という楽しみを封じたままな訳です。
 
で、メディアからコピー出来ない、というのを詳しく見てみよう。
 
「1世代コピー9th」では誰も幸せになれないITmedia小寺信良

ここで孫コピー不可、直接コピーしかできないという意味を、よく考えてみてほしい。これはiPodや携帯電話を、レコーダーに直接つないでコピーせよ、ということである。
これまでPSPがつながったり、SDカードに転送できるレコーダーは存在したが、今後登場する携帯電話の新モデルや登場するであろう新型iPod、さらには有象無象存在するPMP(Portable Media Player)に対して、レコーダーが接続を保証しなければならない。さらにそれ専用のコーデック、たとえばそこからMPEG-4DivX、あるいはXviDに、レコーダ自身が変換を行なわなければならない。もちろんコーデックのアップデートにも、そのたびに追従する必要がある。そんなことが可能だろうか。

接続保証!  ガタガタ((((゜Д゜;))))ブルブル
 
「え? インターフェース規格に適合させとけば、何だって動くんじゃないの? メーカーの仕事って、そこまででいいんじゃないの?」とか言う人は甘い。甘すぎる。
インターフェース規格なんてのは、ハードウェア・ソフトウェア的には、「守ってて当然」なもので、守ってても動かないものは動かないんですよ。これを俗に言う「相性」と言います。
だから、接続保証する為には、実際に繋いでみて、一通り以上の機能を操作してみないとダメ。
三流メーカーは「規格は守ってるから、何でもOK」とか言うだろうけど、まっとぉなメーカーは、マジで接続試験を一機一機やってます。
装置との接続確認のために、日本で発売された全ての携帯を繋いでみる、とか、本当にやってる装置もあるんだって! マジで!
 
で、せめてもの簡略化として、SDカードとかのメディアに吐き出す機能を搭載する。
こうすると、SDカードとかにデータを収めれば、本当に必要なメディアがスマートメディアだろうが、メモリースティックだろうが、パソコン+変換アダプタ(USBに刺さる奴?) で容易にメディア変換が出来る。ちょっと無責任だけど、あとはユーザー責任で、って訳です。
 
ところが、ダビング10は、孫コピー出来ないので、このメディア間転送ができない。
対策は2つ。メディアを統一するか、装置間をケーブルで直接繋ぐか……両方難しいぞー。自分の持ってる、携帯とパソコンとDVDレコーダー……その他いろいろの再生・記録デバイスは、全部ケーブル接続できますか? 記録メディアは一緒ですか?
ついでに、記録動画のフォーマットは全部一緒……たとえば、MPEG-4で統一されてますか? パソコンで変換して、ってことが出来ないんですよ?
 
続き。

かなり無理はあるが、これからのレコーダーはそれでがんばって作っていけばいいじゃないか、という話かもしれない。だがすでにデジタルレコーダーは、国内に約280万台以上も出荷されてしまっている(JEITA資料)のである。コピーの有限回数制限への変更を行なうことになると、既存のレコーダーはもちろん、テレビも現状のままでは済まない。
そもそもデジタルコピーの制御記述子は、たった2ビットのcopy_control_typeというフラグで規定されているにすぎない。2ビットということは、組み合わせが4つしかないということである。その内訳は、00がコピーフリー、10がコピーワンス、01は未使用、11がコピー禁止となっている。01フラグが未使用なので、ここを「9回コピー」というフラグに規定することになるだろう。
従来の機器で、これまで使われていなかった01フラグがやってきたときにどのような挙動をするのかは、各メーカーの設計者にしかわからない。おかしな挙動にならないよう、放送波を使ったファームウェア更新で修正することは可能だろう。

いやいや、期待外設定の装置挙動なんて、メーカーの設計者にも、往々にして分からないので(笑)、ファームウェア更新は急務となる。
皆さん、ご自分の携帯とパソコンと(略)は、ファームウェアをどうやってUpdateするか、ご存知ですか?
 
ちなみに、下記の記事によると、
コピーワンス緩和 「9回まで」OKに 視聴者利益を優先ITmedia産経新聞

従来の機器で複数回のコピーを実現する方法としては、機器の一部改造や、ソフトウエアの変更・更新などが考えられるが、ある大手家電メーカーは「新しい規格が定まらないと対応策も決められない」と話す。別のメーカーは「対応できる機種と、そうでない機種が出てくる可能性がある」としており、すべての機器を"救済"することは難しいとの見方を示している。

とあり、今後もコピーワンスのままでダビング10未対応、という録画・再生装置もあるようです。
 
(後日注:この辺以降、Blog主の勘違いがあるようなので、厳重注意。続き参照のこと) 
 
ただねぇ。
HDDレコーダー使って番組を録画しても、見たら消していく人。
あるいは、HDDレコーダーで、DVDに保存して、そこまでの人。
そういうライトユーザーの人達は、コピーワンスでも、ダビング10でも、関係ないのよ。せいぜい、9回もDVD焼くのに失敗できるようになっただけ。
 
まぁ、孫コピー禁止、ってことは、DVDとパソコンにコピーして、パソコンのデータが飛んだとして。DVDからパソコンにデータを移動させることは出来ません。もう一度、レコーダーから取り出してください……レコーダーからは、もう消した? じゃ、今あるDVDで見るだけにしてね?
 
じゃ、ライトユーザーは、この話、無視していいのか?
せっかくのハイビジョンだけど、今時、TVから録画した番組を加工したりしない? CMカットなんて、やらない?
 
実は、こっからが本筋で、今回の私的録音録画小委員会パブコメに絡む。
そう、私的録音録画補償金制度だ。
 
そもそも、一度は、コピーワンスなんかやめて、JEITAが出していた「EPN」(Encryption Plus Non-assertion)って暗号形式にしようぜ、という話が出てた。
 
コピーワンス緩和へ 情通審「透明なプロセス」求める(ITmedia)
神々の失墜、崩壊するコピーワンス(ITmedia)

EPN方式では、放送局からの電波に乗ったコンテンツは、EPNによる暗号化で送信されてくる。録画機はこれをそのまま録画し、コピーする際もこのEPNによる暗号化のままでデジタルコピーできる。数には制限はない。ただEPNの暗号化を解くための鍵を、再生するデバイス側に持たせるというわけである。つまりコピー行為そのものを禁止するのではなく、違法入手したコンテンツの再生、言い換えれば出力を禁止するわけだ。

これだと、EPN対応装置での編集・記録・複製も自由だし、外部記憶させたメディアから読み込んだデータも、やはり、編集・記録・複製が出来る。
肝なのは、パソコンはEPN対応装置じゃないから再生できない、という点で、インターネットでのストリーミング再生を封じるというのが特徴となる
……えーと。ネットにあげたデータを、ダウンロードしたら、複写できちゃうのかな。落としてきたデータを、DVDに焼いてEPN対応装置に持ち込めば再生できるのかな?
 
ところが、権利者団体が激しくゴネた。

日本でのコンテンツ不正流通が起きる大きな場所は実はネットオークションなんです。運営会社は監視を強化していますが、いまだにディスクの形で人気番組が不正に出品されるケースは後を絶たず、コピーをフリーにするならば問題がさらに拡大することはまちがいないと権利者側は一致して反対を唱えました。
特に映画会社は一番強硬で、パッケージを持てるという権利があるのは実は映画会社だけで、ユーザーにはその権利はないという立場が鮮明です。ユーザーがその放送の時間に見ることができないからタイムシフトはしぶしぶ認めるが……という立場です。したがって、もっとも強硬にEPNに対して反対していたわけです。

現在の法律体系では、海賊版を購入するだけでは罪にはならない。販売目的で購入したらアウトなんだけど。
「ヤフオクで海賊版買わないで」――落札経験者にメール(ITmedia)
この辺は、今回の法制問題小委員会でも話題にされてた……んだけど、あれー。中間まとめには、あんまり載ってないなぁ?
 
話し戻して、権利者団体のあまりのゴネっぷりに、総務省が「地デジ移行が迫ってるのに、えーかげんに、さっさと話をすすめろや。EPNでいいじゃないか」と横槍を入れるとこまで来た。(これも総務省が地デジ移行を至上命題にしてる、単なるエゴなんだけどね)
そこで、権利者団体は紆余曲折の上、「ダビング10」(当初の名称はコピー9かな?)ってのを持ち出して来て奇跡の大逆転を果たした。「これならユーザーも納得だ」とばかりに、話を進めてる。
 
このJEITAと権利者団体の綱引きは、単純な話。
私的録音録画補償金ってのが絡む。
 
「コピー10回だからこそ、補償金制度が不可欠」――権利者団体が主張ITmedia
前にも書いたけど、保証金制度ってのは、「CDをダビングされたらCD売れなくなって困るから、メディアメーカーには、空メディアにあらかじめ保証金を上乗せした価格で売らせようぜ」って始まったもの。
今回の私的録音録画小委員会の中間報告では、HDDレコーダも対象になろうとしてる。価格に上乗せされちゃう訳。
で、JEITAが「保証金は払いたくない! インターネットストリーミングには、再生プロテクトで対抗してやらぁっ」と出てきたのがEPNなのよ。
まぁ、ダビング10になると、さっきも言ってた接続保証の話も出てくるし、規格どおりに真面目に装置を作りこんでいれば確実にファームウェアUpdateで対応できるEPNと違って、ダビング10は新たに作りこむ羽目になる。JEITAも必至な訳。
今回も、小委員会が中間報告を公開した途端、見解を公表した。
JEITA、私的録音録画問題について見解を発表(INTERNET Watch
JEITA 社団法人 電子情報技術産業協会
 
お互い、ユーザーのことは考えてないかもしれない。
「どっちにしてもニコ動にTV番組をアップロードできないじゃいないか」*1「利権者の争いにユーザーを巻き込むな」と言うのも分かる。
けど、ユーザーに負担をかけてでも補償金制度継続を狙ってるのは、紛れもなく、ダビング10を支持する権利者団体なのよ。
 
コピーフリーがダメってんなら、次点でEPNを選択するってだけ。ダビング10は選択肢としてEPN以下、って話。
ぶっちゃけた話、私はTV番組に関してはライトユーザーだし、ダビング10でも、EPNでもどうでもいい。
ただ、権利者団体が、ユーザーそっちのけで、著作者に還元されてるのかどうかも怪しいお金の集金に走ると言うのなら、そろそろいい加減にしてほしい、と行動する。
私が敬意を払うのは著作者であって、著作権者ではないのだから。
 
いつものように、勘違いがあったら、ご指摘お願いします。
(後日注:続きます)

*1:詳細は分からんけど、パソコンで再生できる限り、画質劣化を覚悟すれば、アップロードは可能に感じる。つまり、ダビング10なら出来る、んじゃないかなぁ? てことは、オークションの海賊版対策にもなってないんじゃないかなぁ?