MiAUと、すぐそこに迫る危機

では、ミャウ(MiAU:Movements for Internet Active Users / インターネット先進ユーザーの会)について。
私も昨日から勉強始めたとこなんで、間違ってたらごめんなさい。
 
設立理由をかいつまんで言うと、「最新技術を分かっていない奴らが、知らないところで勝手に法律作って規制を増やしていくのは我慢ならん」と私は読み取ってます。
 
設立記者発表会講演「インターネット時代の政治参加について」MiAU公式)

ニコニコ動画ニコンドライフに関連して、ひろゆきさんが「圧力にはほほえみで」とか「線がはっきりわかって誰もニコニコしていないのと、線はおぼろげで見えないけどみんながニコニコしているのとどちらがよいか」というような、ニコニコ的アプローチを唱えていました。マジな対立を、サラリとかわしながら凌いでいくというあり方です。私もこのあり方については、とても共感するところがあります。
でも、とても悲しい現実なのですが、私たちを縛ろうとする権力や法や制度は、曖昧にしていると、私たちがほほえんでいるだけだと、どんどん私たちの側に入ってきて、私たちの自由を削り取っていくのです。ここに集っている皆さんなら、そのあたりの事情をよくご理解していると思います。確かにミャウのアプローチは、泥臭く見えるし、なんだかマジでかっこ悪いと思います。でも、私たちがニコニコするために、誰かがやらなければいけない汚れ仕事なんだと思います。
(中略)
かつて、多くの先人が、ネットワークが私たちの社会を変革すると夢見ました。しかし、現実世界で声の大きい人たちは、ネットワークが現実社会の一部分として、これまでの規範に従属すべきであると主張します。そうしてネットワーク文化を、現実社会の法や道徳の観点から「悪いもの」として扱ってきたのです。法律が理由となって消えていった、いくつかのアプリケーションやサービスを思い出してみてください。それらのアプリケーションやサービスを作り出し、利用してきた人々の夢や希望は、もとより存在してはならなかったのでしょうか? 無駄だったのでょうか?
ネットワーカーのみなさん、声を挙げましょう!

「みゃっうみゃうに盛り上げたい」──インターネット先進ユーザーの会が発足(ASCII.jp)

発起人の津田氏は、MiAUの活動方針として以下の4点を上げた。

  1. デジタル技術と法制度に関する正確な知識の供給
  2. 技術発展や利用者の利便性に関わる法制度への対応
  3. 関連する政府報告書のパブリックコメントに対する意見提出活動
  4. インターネット利用者の情報リテラシー向上の支援

こっちは、なぁなぁでやってこうとしてるのに、それを良いことに既存組織が実効支配/独占地域の拡大を進めていくのなら、防備を固めるしかない……とでも理解すればいいのでしょうか。
 
まぁ、文化庁側にも言い分があって、「小委員会に既得権利者ばかり呼ぶなよ、って……じゃあ、ユーザー代表に誰を呼べばいいの?」ってのがある。
ここで「誰って……誰だろ?」「俺、意見持ってるけど、俺が代表って、勝手に言っていいのかな?」とかモタついてたのが今まで。
黙ってたら好き放題されるから、「とりあえず、俺達が 人柱 窓口になって時間稼ぐから、ユーザーサイドの意見を送ってくれ」というのが現状のようです。
 
ただ、そういうの理解せずに「具体的に何するとこなの?」と下記の文句へ読み進むと、多分、誤解してしまいます。

当面の活動として、新たに作成されようとしている下記の制度について、インターネットやデジタル技術を活発に使っている人々(以下、アクティブユーザー)の意見を代弁いたします。

  1. 違法サイトからのコンテンツダウンロード違法化への反対意見表明
  2. コピーワンス及びダビング10技術の採用に対する反対意見表明
  3. 著作権の保護期間延長に対する反対意見表明
  4. 上記1〜3に関するインターネットユーザーの意見表明の支援

これ見ると「違法サイトからのダウンロードは悪いことじゃないの?」「Winnyマンセー?」「著作権・放映権なんか、ぶっ壊せってこと?」とか、「要するに、この団体、常識外れのワガママ政治団体?」とか思うでしょう。
 
そうじゃない。詳細は後に譲るとして。
とりあえず、今、すぐそばまで忍び寄っていた規制、このままでは成立してしまう法案があり、取り急ぎ対抗手段に出なければならないのです。
まず、既存権利団体が、何を要求しているのか、確認してみましょう。
 
第7回 日本の著作権はどう変わる──「6つの論点」のまとめ(ASCII.jp)

もう、いきなり1つ目が、無茶苦茶危ない。
著作者の親告がなくても、著作権違法で摘発できる……意味分かりますか? 著作権者が黙認(むしろ推奨)してても、警察は動けるんですよ?
ニコニコ動画とかだけの問題じゃないです。コミケとか、当局がその気になったら狩り放題です。
しかも、著作権問題はグレーゾーンがあるので、裁判はケース・バイ・ケースになりがち。ここまではOK、なんて誰も言えない状況で……パロディなのか、パクリなのか、インスパイアなのか、オマージュなのか、カバーなのか、って、この辺、しっかり区別できる人がいます? 私は出来ません。
 
幸い、この話は10/12の中間報告では、先送りされました。

色々議論はありましたが、今回の中間報告では非親告罪化が「先送り」になりました。この問題に関しては、法制問題小委員会の主査を務める東京大学中山信弘教授がとても分かりやすい意見をおっしゃっています。
要約すると、「『特許法はすでに非親告罪になっているため、著作権法も一緒に』という議論があったが、特許権は国民の一部であるプロに関係してくるもの。一方、著作権法は日本人全体を対象としていて、一般人にも関わってくる。厳密に言えば、国民のすべてが何らかの形で著作権侵害をしたことがあるのではないだろうか」といった主旨の話をされていました。
非親告罪化は影響を与える範囲が大きいので、僕ももう少し議論を重ねる必要があると思います。現状では、経済界の要請で話が非親告罪化の方向に行きそうなところを中山教授が止めていますが、またいつこの話が再燃するか分かりません。ネットユーザーも注目しておかなければいけない問題でしょう。

そう、先送りであって、滅んでないんです、この話。
 
2つ目。ネットークションにおける画像掲載。

オークションで「美術品や写真集の画像掲載がOK」となると、例えば写真集を出品するときに全ページ掲載するユーザーがいるかもしれないから規制できないか、という意見も出ていました。

……やる奴も馬鹿だが、「著作権者に許可を取った方がいいのでは」と意見を出す小委員会は更に馬鹿。いちいち、出来るかい、そんなこと。
幸い、これも見送られました。
 
3つ目。検索エンジンにおけるウェブページの収集。

日本は違法か合法かの区別を明確にしないまま、ここまで来てしまいました。
 
(中略)
 
ウェブサービスではRSSを活用して、ブログの一部無断転載などを行なうものがたくさん出ていますよね。そこで少なくとも検索エンジンサービスのデータ蓄積については、何らかの権利制限を設けて権利者の許諾権が及ばないようにしようというのがこの議論です。
これだけネットユーザーに定着した検索エンジンサービスですから、インターネットの利用形態から考えると早く合法化してしまった方がいいに決まってます。

「え、Google検索のキャッシュ機能って、グレーゾーンだったの?」と驚くでしょうけど、その通りです。
 
次が大ネタ、違法サイトからのダウンロード違法化なんですが、ちと長くなるので飛ばします。
これ、素早く話すと、確実に「Winnyマンセー」で終わっちゃうので、丁寧に扱いたいので……明日にでも。
 
5番目。私的録音補償金制度。
なにこれ、って、言う人。既に1992年に日本では導入されてます。
何かって言うと……真っ先に上がるのが、レンタルCD。CD借りてきて、MDやCD-Rに焼いて返す、っての繰り返すと、本来、売れるはずだったCDが売れなくなるわけだから、著作権者の収入が減っちゃう。
それはしょうがないな、って導入された。結果、ユーザーは、機器や媒体を買うときに、賠償金を上乗せされて払ってます。
 
私的録音録画補償金制度Wikipedia

録音(私的録音補償金管理協会私的録音補償金規程より)
 機器/基準価格(カタログに表示された価格の65%)の2%。ただし、録音機能が1つの機器であれば上限は1000円、2つの機器であれば上限は1500円。
 記録媒体/基準価格(カタログに表示された価格の50%)の3%。
録画(私的録画補償金管理協会の私的録画補償金規程より)
 機器/基準価格(カタログに表示された価格の65%)の1%。ただし、録画機能が1つの機器であれば上限は1000円。
 記録媒体/基準価格(カタログに表示された価格の50%)の1%。

てことで、家族の写真を撮っただけ、って著作権とは全く関係ない例だと、言ったら保証金を返してもらえます。

日本では制度が施行されて13年目の2005年に、初めての補償金返還の請求が行われた。家族の姿を録画したという人からDVD-R4枚分の補償金返還を請求された。請求者は80円切手で請求書を送り、返還金は銀行振込の8円であった。

……と、微々たる物ではあるんですけどね。
ただ、これ、むしろ安すぎて。集まったお金を、JASRAC日本芸能実演家団体協議会日本レコード協会に配布するのはいいとして(よくないかも?)、ここから更に権利者に配分しようとすると、もう僅かな金額になってて配る手間賃が無駄、とかなってます。
 
で。
世の中、媒体不要の記録・再生デバイスが出てきちゃった。ハードディスク内臓のiPodとかだ。
機器と扱うにも、媒体と扱うにも適切じゃないので、さてどうしましょ。そういえば、楽曲ダウンロードの出来るパソコン、着メロ大流行のケータイはどうしましょ、ってとこから続き。

−−「私的録音補償金制度」はどうなるのでしょう? 「iPod課金」があるのかどうか、そのほかどのデジタルデバイスに課金されそうなのかが気になります。
津田 「機器の利用実態を踏まえて、どの機器に課金するのが適切なのかを見直す必要がある」という段階で、まだ完全な結論は決まっていません。HDDレコーダーやiPodは課金すべきだが、パソコンや携帯電話機に課金するかどうかは、意見が一致していないという状況です。

そもそも、権利者−消費者というホットラインがあれば、保証金制度なんていらんだろ……楽曲ファイルのコピープロテクトは自分らでやるからJASRACひっこんでろ、という意見もあります。
 
とりあえずのラスト。著作権の保護期間延長について。
「50年じゃ短いよ、70年にしようよ」という、なんていうか、締め切りとゴムはいつまで伸びるんですか、という世界の話。

津田 こちらは、審議会でも意見がまっぷたつに割れていて、話し合いが進まない状況です。まだ議論の途中で結論が出せない状況なので、来年度の国会で改正が決まるということはないんじゃないでしょうか。

 
ふー。とりあえず、見て回った。
「現状のステータスは?」と言うと、実はご意見募集中の状態。

津田 中間報告で基本方針を確認し、それを来年の方針としてまとめたあと、パブリックコメントを1ヵ月受け付けます。そのあと国会に送られて、法改正するかどうかを話し合います。

意見募集中案件詳細(e-Gov電子申請システム)

意見・情報受付開始日 2007年10月16日
意見・情報受付締切日 2007年11月15日

文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理」とか、結構、面白いデータ載ってるな。参考にしよう。

けど……こんなん、誰も知らんがな。
意見を(本当の)一般ユーザーから聞いてる時間はないかもしれないけど、当たり前の感覚であれば、当たり前の意見は出てくると思うので、(とりあえずの)一般ユーザー代表としてMiAUには頑張ってもらいたいです。
(2007/10/22追記:のんきなこと書いてました。続きを見て、パブコメ送付に協力してください)
 
 
てことで、明日に続きます。