この『物語』の主人公って、いったい

世界樹の迷宮 続き。

戦いは冒険者達の先制から始まった
Rの鞭が『翼』の腕を縛る
マギスのヘルズクライが迷宮に響く
レイルズが防御陣形を指示する
はぴの業火が戦いの始まりを告げる
 
勝利は目前にすら思えた
『翼』の一撃すら、レイルズの防御陣形には通用しない
Rの鞭は更に頭を縛りつけた
 
一瞬の油断
 
打撃を加えることに夢中になったのか
防御陣形が乱れた
『翼』の腕から鞭が外れた
 
刹那
『翼』の羽が舞い踊る
『翼』の羽が鎧を貫く
前衛は耐えたものの、カイとはぴは倒された
 
ネクタルとソーマが飛び交う
『翼』の猛攻を耐える
マギスも倒されるが、起き上がってきたカイに癒される
メディカを飲み込み傷を塞ぐ
 
再び
『翼』の羽が舞い踊る
『翼』の羽が鎧を貫く
前衛は耐えたものの、カイとはぴは倒された
 
ネクタルも、ソーマも
手元にはなかった
 
R、全力の鞭裁きも『翼』の腕を捕らえきれず
マギスの必死の打撃も『翼』の命を奪えない
 
三度
『翼』の羽が舞い踊る
『翼』の羽が鎧を貫く
これも耐えるも、時間の問題
 
Rが倒され
マギスが倒され
そして、レイルズに致命の一撃
 
全滅
その言葉が脳裏をよぎる
その言葉が力を引き出す
 
はたして、レイルズは
倒れなかった
最後の一歩で踏みとどまった
 
戦いを終えたつもりの『翼』
その僅かな油断に
最後の一撃を加えた
 
決して強い打撃ではない
決して弱い装甲ではない
 
しかし、届いた
されど、届いた
 
『翼』が崩れ落ちた
 
レイルズは、間髪いれずアリアドネの糸をたぐる
遠巻きにしていた護衛達が、神の敗北に呆けているうちに
 
一行は生還した

マギ「……あれ、私ら、なんで生きてるの?」
カイ「レイルズさんが『翼』を倒して、『糸』を使ってくれたんです」
R 「は? あの状況で、なんで、『翼』が倒せるん?」
レイ「スキル『決死の覚悟』、覚えてたんだよ」
カイ「致命傷を受けてもHP1で耐えるパラディン専用スキルですね」
はぴ「……それ、今まで、一度も発動したことなかったろ」
R 「引き、つえー」
レイ「なんにしても、『翼』は倒したから。あとは護衛どもだ」
マギ「無理無理。とりあえず寝させて。明日、もう一度出かけよう」

決死の覚悟Lv1の発動確率ってどんなもんなんだろ、いや、ほんとに。