これが政府の『脱官僚』

事業仕分けで極秘マニュアル=財務省の視点を指南−政治主導に逆行・行政刷新会議(時事)

政府の行政刷新会議が2010年度予算概算要求の無駄を洗い出す「事業仕分け」で、事務局が極秘の査定マニュアルを作成し、民間有識者など仕分け人に配布していたことが17日、明らかになった。財務省の視点に基づき、仕分け対象事業の問題点を列挙、各担当省庁の主張に対する反論方法まで具体的に指南する内容。政治主導を掲げた事業仕分けが、財務省主導で進んでいる実態が明らかになった格好だ。
事業仕分けは、予算圧縮に向けて国会議員や民間有識者ら仕分け人が、各省庁が要求した事業項目を外部の目を通じ、「財務省には無い視点」(枝野幸男ワーキンググループ統括)でチェックする仕組み。すべて公開で実施され、鳩山政権初の予算編成に当たって導入された。
査定マニュアルは、事業仕分け前に「参考メモ」として仕分け人に配布され、事業ごとに「論点」を提示し、問題点などが個条書きされている。マニュアルに従えば、対象事業に詳しくない仕分け人でも、厳しく問題点を指摘できる仕組みだ。 

 
へー。
官僚主導じゃない、と言い張るんだ、これ。
「官僚の出してきたデータなんて信じられない」って言ってた民主党支持者の人、これって、下記の話と同じぐらいの重大な裏切りだと思うんだけど、どうだろ。
 
タウンミーティング 政府「やらせ」赤旗

石井氏が一日の同委員会で「やらせ質問」を裏付ける文書を示し、内閣府も文書作成の事実を認めたものです。

私は、質問者がいないことに備えて、サクラを用意することは、会議主催者として当たり前の発想だと思ってたんだけど、「世間の声」とやらはそうじゃなかった。
この時は、野党が猛反対したけど、今回のと何が違うの?
 
蓮舫議員と語り合いたい「もったいない」の意味(日経ビジネス)*1

事業仕分け」の映像は、なんだかものすごい。
ニュース番組の編集方針が、印象的な場面を連続再生する形式を踏んでいるということもあるのだろうが、それにしても強烈だ。
特に、各局のニュース番組が繰り返し紹介していたカット(蓮舫議員が「国立女性教育会館」の理事長さんを問い詰める一幕)は、アメリカの法廷ドラマ(←ただし低予算)みたいだった。
が、その場面を活字で再現しようとすると、うまくいかない。 
「民間の利用はありますか?」
「あります」
稼働率は?」
「私の話も聞いてください。一方的にただ質問に答えろというのは心外です」
……と、文字にしてしまうとこれだけになる。
迫力を欠いている。
なんだか牧歌的なやりとりであるようにさえ読める。
というのも、私がテレビの録画から聞き取ったこの字面からは、あのやりとりのエッセンスがほとんどすべて抜け落ちてしまっているからだ。
具体的に、映像の言葉とテキストの文字では、どこが違っているのだろうか。
以下、テキスト化できなかった要素を具体的に列挙してみる。
 
1. 蓮舫議員の声の「張り」:あのトーンは「ひざまずいて私の靴をお舐め!」の声だ。ああいう声の人間に問い詰められると、普通の人間はそれだけで心が折れる。新入社員の3割ぐらいは、たぶん泣く。
2. 対話の間:「あります」の語尾がまだ発声し終わらないうちに、「稼働率は?」と、次の質問が畳みかけられている。このおっかぶせるタイミングでの問いかけは、質問者が回答者の返答を聴いていないことを意味している。つまり、両者のやりとりは「対話」であるよりは「尋問」であり、それ以前にいじめに近いということだ。あるいは、この事業仕分けというイベントの主旨は一種の公開処刑であるのかもしれない。
3. 発言後の蓮舫議員の表情:関西の人たちが言う、いわゆる「どや顔」だと思う。「どうだ。恐れ入ったか?」というキメの表情。たとえば、印籠を出す時の格さんの表情。遠山金四郎の桜吹雪一件落着顔。土下座で受け止めるほかに対応のしようがない。歌舞伎の大見得にも通じる一種の勝利宣言なのだと思う。
4. 仕草:蓮舫議員は、ボディーアクションの大きい語り手でもある。左右対称に動くことの多い両手と、左右に回転する首は、着ぐるみの中の役者の演技に似ている。「猿の惑星」のコーネリアスの会話法がまさにそれだった。手話というより体話。言葉を後押しする肉体言語。これらのアクションは、議員の言葉に言語化不能なニュアンスを付加している。
5. 歯:ツブの揃った過剰に白い歯並び。差し歯であろうか。谷崎潤一郎が「陰翳礼賛」の中で「便所のタイルみたいな」と形容した、一点のカゲリもないアメリカンビューティーのこれ見よがしの歯。口ごもることを嫌い、言いよどむことを恥辱と考える人々による、正面からの直言。その舌鋒を支える城壁としての前歯。
 
こういう対象を目の前にすると、つくづく活字の無力を思い知らされる。
あの蓮舫議員のたたずまいは、絶対に文字では伝わらない。「筆舌に尽くしがたい」というやつだ。ペンには舌があるばかり。歯もなければ唾も飛ばない。舐めることはできても咀嚼はできない。唾棄も。

官僚の作ってきた資料に基づいて、プレゼンターの発表を聞く気もなく尋問、って、財務省が仕組んだサクラ以外の何者でもないと思うんだけどねぇ?

*1:都合のいいとこだけ引用しているけど、引用先は、新刊の購入を続けますか、という未来に向けた話を、読み終わった本を捨てる捨てないの保存の話にミスリードさせているので注意