Android: Netrunnerについて

今回は、前々から話そうとして出来てなかった、Android: Netrunnerというカードゲームについて書いてみよう。

その歴史

大元を正すと、R. Talsorian Games社の「サイバーパンク2.0.2.0.」というTRPGがベースにある。
1988年に初版が発売されたゲームで、日本語版は1993年に発売された。
 
世界観は、その名のとおり、サイバーパンク
やりたい放題の権力を持つに至った巨大企業複合体が存在する近未来SF世界を舞台に、サイバーパーツを体に埋め込んだプレイヤーキャラ達が活躍する、というテーマ。
日本だと、アニメにもなった漫画「攻殻機動隊」とか、映画「マトリックス」の世界をイメージしてもらえばいいのだけど。
 
そのゲームのプレイヤーキャラの選択できる職業に、電脳世界のハッキング・クラッキングの専門家となる「ネットランナー」ってのがある。
サイバースペースで、データを盗もうと、企業のサーバーに侵入して(「ラン」と呼ぶ)、データを守るべく立ちはだかるICEというファイヤーウォールを突破・破壊して、というのがメインのお仕事となる職業だ。
 
で、そのネットランナーと企業の、電脳空間の戦い+実世界での追跡と逃走をクローズアップしたトレーディングカードゲームとして、Wizards of the Coast社が、その名もずはり「Netrunner」というゲームを出した。1996年のことだ。
マジック:ザ・ギャザリング」を制作したリチャード・ガーフィールドゲームデザインを担当するなど、鳴り物入りでリリースされたゲームだった。
 
当時「マジック:ザ・ギャザリング」を遊んでいた私は、結構なお金を出して、日本にも入ってきていた英語版のカードを買って遊んでいたのだけれど。
 
ぶっちゃけ、商業的には完全に失敗した。
エキスパンションを2つ出したとこで、シリーズは滅んだ。
1993年に発売され、2015年現在もシリーズが販売され続けている「マジック:ザ・ギャザリング」とは、えらい違いだ。
 
さて、時が下って、2008年。
ちょっと関係ない話として、Fantasy Flight Games社が「Android」というボードゲームを出した。
世界観としては、やはりサイバーパンク。殺人事件の犯人を探す、というゲームだ。
 
その後、何を思ったのか、Fantasy Flight Games社は「Android」と、かつての「Netrunner」を結び付け、Wizards of the Coast社から権利を買い取り、基本的なルールは当時のまま、カードは一新させて「Android: Netrunner」を発売した。2012年のことだ。
 
ジャンルは、「Living Card Game」。
かつてのトレーディングカードゲームとの違いは、まさに「トレーディング不要」な点。
トレーディングカードゲームというのは、追加パックの中にランダムなカードが封入されているものだが(うん、そう、今だとソシャゲのガチャと思ってくれればいい。むしろ、ガチャの原点はこっち、トレーディングカードゲームだ)。
Living Card GameとなったAndroid: Netrunnerでは、「このパックには、これこれというカードが何枚入っています」と名言されている。
欲しいカードが出るまで、ひたすらパックを買い続ける羽目になるトレーディングカードゲームに対し、Android: Netrunnerでは、必要なカードを入手する為の費用が明確に示されている訳だ。
 
とはいえ、新しいカードセットが出れば、プレイヤー全員がそれを買う訳で、決して安く遊べるゲームではないのには変わりない。
だって、2012年の発売以降、追加パックがほぼ毎月発売されている訳で。
今現在、基本セットが1つに、データパックが24個、大型拡張パックが4つが発売されてるから、日本円換算だと合計で……(ここで私は考えるのをやめた)。
 
まぁなんにしても、Android: Netrunnerは、かつてのNetrunner と違い、そこそこ成功してるって話だ。
日本語版の発売も予定はされている。少し前から予定だけはされている。
本当に発売されるかは分からない。だって、今から(考えるのをやめた)な金額を出さなきゃ、英語版に追いつけないって、どうなんだろう、とは私でも思う訳で。

前置きが長くなった

Jintekiという英文サイトがある。
 
ファンサイトの1つで、無料で Android: Netrunnerのオンライン対戦が出来るサイトだ。
一部のカードの効果は、プレイヤー同士の話し合いで盤上の調整をしなければならない、という問題はあるものの、発売済みの全てのカードを使って遊ぶことが出来る。
 
デッキの作成に細かい制限事項のある Android: Netrunnerでは、デッキ作成してみて、そのデッキにルール違反がないか確認出来るだけでも便利なサイトだ。
 
但し、当然のように公用語は英語で、なかなか身内以外での対戦は難しい。
話し合わないと調整できないカードは、まだまだ多いからだ。
 
なお、著作権はどうなってるのかな、というと、

Disclaimer
Netrunner and Android are trademarks of Fantasy Flight Publishing, Inc. and/or Wizards of the Coast LLC.
This is website is not affiliated with Fantasy Flight Games or Wizards of the Coast.

「免責事項:NetrunnerAndroidは、Fantasy Flight Publishing, Inc.と Wizards of the Coast LLC.の商標だよ」
「このサイト、Fantasy Flight Publishing, Inc. とも Wizards of the Coast LLC.とも、無関係だから」
 
……うん、完全にブラック(笑)。
とはいえ、マイナーゲームだけに、リアルのカードを購入していないプレイヤーが利用している気配はないようには感じる。
サイトの操作説明はあっても、ゲームのチュートリアルは、どこにもないしね。
 
 
さて。
ジンテキ東京というサイトがある。
Jintekiはオーブソースな為、それをベースに和文に手直ししているサイトで。
先日、友人がこのサイトを見つけてから、私も利用している。
 
現在、第一回のオンライン大会が開催中で、昨日、予選が終了。
8人参加で、上位4人が決勝進出、という小規模な大会なんだけど、なんとか私も決勝進出できました。
 
31日が決勝らしいけど、デッキ的に、ここまで、って気はするなぁ。

ところで、Android: Netrunnerの何が面白いの?

終始、企業とランナーの「読みあい」という点と。
それゆえに、ランダム性が引き立ち、ブラフというゲーム性が混ざる点。
 
 
企業は、基本的に盤上に裏返しにカードを置いて、必要になったら表返して効果を発揮するのだけれど。
ランナーとしては、裏返しのカードが何かを読んで、ランを仕掛けるか。
何が来ても対応できるように、準備を整えるまでランを控えるか……という選択肢がある。
 
でも、システム的には、後者の選択肢ではランナーは負ける。
巨大な企業相手に一個人がハッキングを仕掛けるのに、リスクがなくなるまで入念に準備していては、スピードで負ける。
いつか勝てばいい、なんて話ではない。企業が事を為すまでに勝利を得なければ、ランナー側の大切なものは失われる、そんな背水の陣だ。
 
企業側と違って、ランナー側で伏せられているカードは基本的に手札だけだ。奇襲するなら、手札だけが頼りとなる。
リスクとリターンを検討して、多数の選択肢から最善手を選択しなければならない。
 
 
逆に企業側はランナーの準備が整う前に勝利点を稼ぎ切るか。
ランナーの準備があっても防ぎきるような、ICEを多重に張り巡らせた堅牢なサーバーを構築するか。
あるいは、ランナーの準備の隙をついて、サイバースペースをうろつくランナーの精神を焼き切るか。
はたまた、リアルでランナーの居所を突き止め、ランナーを隠れ家もろとも焼き払うか。
こちらの選択肢も大量にある。
 
 
どちらの陣営も、時間と予算は限られている。
時間を使えば予算は稼げる。時間があれば手札も増やせる。予算と手札があれば、大抵のことは上手くいく。
 
しかし、そこにリソースの制限があるから。
相手より早くリソースを稼ぎ、相手のリソースは速やかに削り取り、いち早く勝利条件を満たさねばならないから。
 
お互いに、肝心なカードが手元にないかのように振る舞い、相手が隙を見せた瞬間、致命的な一撃を叩きこむ。
この、「一の力を十に見せ、十の力を一に見せる」というやり取りが、面白い。
 
 
まぁ、周りにプレイヤーがいないと、なかなかお勧めできないゲームなんだけどねー。
結構、のめりこんでるゲームなのに、紹介したことがなかったので、これを機にと書いてみました。